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#9 ちょっと卒論について話してみよう。

目が痛い。
オシリが痛い。
首が痛い。


そんなことをぶつくさ言いながら書いてるこの卒論について少し話してみたいと思います。


私が扱う題材は超ディープ、そしてダーク。
満州の引揚者について書いています。

歴史的な事件と言うよりは、
もっとマイノリティの、
当時満州に普通に暮らしていた人たちがどんな風に生活をし、何を感じていたのか、
それを取り上げています。


満州と聞けば浮かんでくる言葉は、
ラストエンペラー、傀儡国家、中国東北地方…とか?

日本が満州事変を契機に「獲得」もしくは「侵略」もしくは「占領」して、
宣統帝溥儀を皇帝として作り上げた傀儡国家のこと。

そんなのは教科書を見ればいい話なので延々書くのはやめ。


155万、もしくはそれ以上のたくさんの日本人が満州に住み、
私の祖父と祖母、そして伯父もそこで生活をしていました。
これがこのトピックを選んだ最大の理由。


3人共私が生まれる前に亡くなったので、
正直自分のおじいちゃんやおばあちゃんやおじさんが、
どれだけ大変な思いをしたのかを小さい頃から聞かされても、
冷たいのかもしれないけどイマイチぴんとは来なくて。

「昔、歴史上でそんな事があったんだ」くらいにしか、
多分本当に正直なところ思っていませんでした。

その意識が少し変わったのは、
甥っ子が生まれて母や父を見て、
私自身を見て、
祖父母と孫とはこんなにも本来は近い関係にあるってことに気付き、
そして甥と叔母の関係も本来はこんなに近いものなんだってことに気付いたのが、
それが大きかった。

会った事は一度もないけど、
リビングに飾ってあるおじいちゃんとおばあちゃんは私にこんなに近い存在だったんだって。
アルバムの中の赤ちゃんのままのおじさんも。


月並みかもしれないけど、
戦争が終ったのって本当はそんなに前じゃなくて、
でも今は豊かすぎて、そんなことに気付かない。

例えば自分で選んでご飯を食べない事はあっても、
本当に本当にお腹が空いてるのに食べられない事なんて滅多にない。
お腹が空いていたら一食抜くだけで辛いのに。
それが何日も何週間も続くってない。

喉が渇いても蛇口をひねれば水が飲める。
炎天下、何日も水を飲めなくて、雨が降ったら空に向かって口を必死で開けるってない。

うだうだしながらこたつで寝ちゃって風邪引くことはあっても、
土の上で震えながら寝る事もない。

甥っ子の顔を見て、
テーブルの上にある物を勝手に口に入れちゃわないか心配しても、
彼が飢えて死ぬ事を心配したことはない。

家族や友達が必ず明日元気で生活出来てることをほとんど絶対的に信じられる。
例えば距離が離れてて、今は会えないとしても。


たかだか60年前に、
自分にとってこんなに近い存在の人たちが、
私が今当たり前に得られている物を、
どれだけ欲しても得られずにいたのだと思うと、
どれだけ自分は幸せで、
どれだけそれに対して鈍感なんだろうって思う。

きっと私は、
今こんな風にしんみり話してても、
明日には頭のすみっこに追いやってしまって、
また「幸せ」を当たり前に受け取っちゃうんだろう。


戦争体験を彼らに直接聞くのは無理で、
大叔父さんから話を聞いたり、
近い体験をしたであろう人の手記を読みながら書くんだけど、
読んでて、やっぱり辛くなる。
彼らに重ね、自分に重ね、家族に重ね、友達に重ねてしまうから。

先生には感情を入れちゃだめで、
客観的にならなくちゃだめだって言われてて、
気をつけているんだけど、
たまに冷静になり過ぎてやっつけ仕事してる自分見て引くし、
感情を入れてしまうと自分の身近な人を重ねてしまってすごく悲しくなる。

日本人は「中国や韓国の人たちから理不尽に搾取した存在」であって、
その「報復」を受けるのは「当然」であって、
祖父や祖母だって「その一端を担った人」なんだからって、
そういう考え方もあるんだけど、
わかるんだけど、
そういうことを越えて、
やっぱり私は60年前の彼らを思い、
彼らと同じような困難を乗り越えた人を思ってしまいます。
よく生き抜いて、母を生み、私につなげてくれたって。


難しい。


何かとっても難しい日記になってしまいました。
とにかく、提出にちゃんと間に合って、やっつけ仕事じゃない卒論を書きます。
by a_mazing_zoo | 2006-01-09 00:11
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